口
二〇一八年が始まり早五日。
学期末の試験を一ヶ月後に控えながらも、実家で煮過ぎた餅のように溶けた吉岡だったが、テレビに映る吉岡里帆を視界に捉え、思う。
「吉岡里帆と結婚すれば、どっちも名字変わらんで済むやん」
吉岡の今年の目標は「寡黙」だ。
口は禍の門。能無しの口叩き。ベラベラと舌を打つと碌な事がない。
過去の英国の二枚舌外交には辟易する。米国大統領の口舌マドラーは世界中を掻き回している。
吉岡自身も普段から喋り過ぎという自覚が有り寄りの有りである。
人の話を聞かないままに、自分の意味のない話を緩い便のように垂れ流しても、面倒臭いだけ。
「吉岡里帆と結婚したらすれば、どっちも名字変わらんで済むやん」
という、目標とも夢とも言えない考えを、溶けた餅の吉岡が実家の家族に共有しても噛みきれないだろう。
だからここに書く。
吉岡里帆という存在を吉岡のものにしたいのだ。